サイボウズ かんたんシリーズ>特集>星野リゾートが再生、5年で黒字化した企業復活の軌跡 古牧温泉復活物語 (1/8ページ)

プロローグ「君、行ってみる?」

2004年11月、古牧グランドホテルの料理人だった熊野 芳武さんは、テレビで自分のホテルの社長が倒産の記者発表をしているらしいという話を聞いて、頭が真っ白になった。

「もう信じられないというか、家族にどう報告しようとか。明日からの生活どうなるの?とか、そういうことばかり考えてました。もちろん家族は報告より先に知っていたんですが。」

青森県の古牧グランドホテルは、実業家で第一国立銀行を設立した渋沢栄一の秘書だった杉本行雄が、三沢の地に温泉を掘り当てて昭和48年に開いた古牧温泉を観光資源に開発を続け、80年代には東京ドーム約17個分の広大な敷地と第1〜第4グランドホテルの大きな観光ホテルを有する青森県一の観光地として栄えた。

当時、このホテルに就職するのは青森県人にとっての憧れであり、旅行新聞社の「行ってみたい観光地」に10年連続で選ばれるなど、日本一の観光旅館といっても大げさではない繁栄を誇っていた。

しかし、拡大戦略が裏目に出てバブル崩壊以降は客足が途絶え、施設の老朽化により人気も低下。一泊3,150円という低価格プランを打ち出し客足を回復させるも、収益的には赤字続きだったという。

そして、とうとう2004年に220億の負債を抱えて経営破たんした。

それからしばらくして、古牧グランドホテルの再生に携わることとなった長野県軽井沢の星野リゾートの社員である佐藤大介は首を捻って考えていた。

「どう考えても絶対に無理だろう、大きすぎる。」

不思議に思った佐藤が専務に聞いた。

「この案件、無理だと思うんですけど、いったい誰が担当するんですか?」

専務の答えを聞いた佐藤の顔が一瞬こわばった。

「君、行ってみる?」

2週間後、佐藤大介はすでに東北の地に降り立っていた。


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